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執筆者の写真P Hitome

暴風の春

仙台の春は暴風が吹いて花粉が顔面に大量に付着して別に花粉症じゃないのにアレルギーが悪化して肌がクッソ荒れる。


Version1.0掲載の「杜の都の早慶戦」第1話の字プロットが発掘されたのでここに貼っときます。




 

ぱっと視界が開ける。人工物に塗れた山林や、すっとストロークに任せて街へと繋げたような川が目に入る。好奇心旺盛な少年は、まるで子供のように座席に逆向きに座り、人目を憚らず歓喜の表情を見せ、感嘆の声を漏らした。

列車を降りる足取りも軽く、軽快に階段を駆け上がる。そして目に入る初春の木々。まだ緑色に染まらない広葉樹と、常にくすんだ緑色を見せる針葉樹が入り混じる並木を抜ける。桜はまだ蕾が開いていない。地面には木々の葉が落ちて褐色の絨毯が敷かれている。少し肌寒い風が少年の体を掠めた。風に向かうように歩く少年の髪がふわりと靡いた。

校門を入って少年の目に飛び込んだのは、建物を取り囲むように植えられた記念樹の数々であった。今日は高校の合格発表の日で、周囲の生徒たちは緊張と不安に満ちた面持ちで番号の開示を待っていた。そんな中でただ一人、好奇心に任せた行動をとる少年の姿は異様なものに感じられた。

地面を、また木々を見上げながら少年は奥へ進んでいく。彼の目には地に無数に散らばるヒマラヤスギの実の欠片が映る。そして運良く薔薇の花のような形にまとまった実を見つけると、目を輝かせつつ大切に拾い上げ、ポケットに突っ込む。日が差し込んだり暗くなったり、ゆらゆらと揺らぐ光源で目が眩みそうになる。彼の態度が周囲の生徒たちと明らかに違うことを除けば、純粋な好奇心に身を任す少年の姿は実に幻想的なものであった。

 

ストロークに任せて街へと繋げたって何だよ。

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