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ひとめワールド
バージョン 2.3
或る日の川辺2
20230531
かつての川辺はより一層深い霧が立ちこめていた。向こう側から聞こえていた管弦の音色も、かすかな花の香りも、微塵も感じられなくなっていた。
遠くから巨大な機械の動く音が聞こえる。轟音を立てて軋みながら無慈悲に人を飲み込んでいく。
それはもしかしたら幻かもしれない。摩天楼を取り囲んで巨大化する機械などそこにあるはずがないのだ。目を背ければきっと跡形もなく消え去ってしまうだろう。しかし私はそこから目を背けることができない。この川辺に流れ着いてしまったからには問答無用で目に飛び込んできてしまう。そして自分があの機械に捻り潰される未来の幻覚をずっと見続けるのだ。あるはずのないものだと自分に言い聞かせてもそれをどうしても信じられない。
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